東京都目黒区・M様邸(2021年4月30日設置)の事例

パーキングポイントについて
はじめに、片道40段の階段

福祉関連の業者さんからご依頼を受け、初めてM様邸を訪問させて頂いたのはまだ肌寒い今年2月頃のことでした。

1階と2階にテナントが入るビルのオーナー様宅で、3階も貸スタジオになっており、オーナー様ご夫妻は4階に住んでいらっしゃいました。

当初エレベーター設置というお話もあったようですが、構造物、スペースの関係で設置できないことが分かり、外出の際には1階から4階まで階段を上り下りされていたそうです。

設置を希望された階段は、2階から4階の全31段。

今回は設置されなかった1階から2階までを含めると、外出の度に片道40段以上の階段を上り下りされていたことになります。

設置工事の際、我々は階段を上り下りされるお姿を拝見したのですが、大変ご苦労されていたので、現場の誰しもが早く乗って頂きたいと感じていました。

階段リフトを設置して頂いたことで、これからは安全に快適に上り下りされることと思います。

今回、HESの階段リフトを薦めて頂いた福祉関連業者さん、最終的に採用して頂いたお客様には、改めて感謝申し上げます。

【人が入って来る階段】

さて、M様邸では個人でお使いになる階段リフトではあるものの、2階に飲食店があり時間帯により不特定多数のお客様が来店されます。

下の写真は本体が2階にある状態ですが、左側が店舗入口、下から階段を上ってくるとバッチリ丸見えで、安全上、防犯上、ここに停止させておくことはお薦めできませんでした。

今回の様にレール下側が垂直落とし加工(バーチカル)の場合には、3段目辺りにパーキングポイントを設けることが多いのですが、3段目でも丸見えなので左側にカーブした反対側に設置し、2階から見えない状態にすることを提案させて頂きました。

パーキングポイントとリモコン設定についてはなかなか上手く伝わらないことがあり、今回はM様邸の事例を基にパーキングポイントにスポットを当ててお話していこうと思います。

ちょっと長いかも知れませんが、お付き合い下さい。


2階停止位置

【2階停止位置】 1階から階段を上がってくると正面に階段リフトが見えます。

位置関係を確認しましょう。


上の図面は、2階から3階までの階段を表しています。

階段を見上げて左付け、内回りの設計です。赤枠の2階停止位置が上の写真を平面で見た位置になりますが、パーキングポイント①は2階からは見えない位置にありますので、飲食店のお客さんにはレールしか見えません。

外出する時は、2階で下りたら椅子を折り畳んでからパーキングに送って駐機、外出から帰って来たらパーキングから2階に呼んで来て乗るという操作になりますが、これはリモコンで行います。

リモコンは標準で2個付いており、今回の設計では中間(3階)にも停止位置があるので+1個で全部で3個になるのですが、介助用リモコンかパーキング用リモコンのいずれかに設定することになります。

ここでお伝えしたいことは、通路の邪魔になってしまうなど下側に停止させるスペースが無い場合には、数段上った位置にパーキングポイントを設置する、また、人に触られる(いたずらされる)可能性があるなどの場合には、ぐるんとカーブした壁の裏側に設置する提案もありますということです。

パーキングポイントは、レールの直線部分であれば任意の位置に設置可能で、充電が行えるポイントです。

ひじ掛けのジョイステックを抜いておくと操作されませんが、人目に付く所に置いておくのはやはり心配ですね。


パーキング①

パーキング①はこんな感じです。

【パーキングポイントと停止位置について】

パーキングポイントと同じ働きをする(充電できる)ポイントには、乗降りするポイントである停止位置も含まれます。

ポイントとか位置とか混乱しそうですが、ここではそう呼ばせて頂きます。

この2つのポイントにあるパーツ(構造)は同じもので、設計上は、パーキングポイントは基本的に階段上に駐機させておくポイント、停止位置は人が乗降りできるポイントという違いがありますが、どちらも充電できるという意味では充電位置(チャージポイント、チャージコンタクトなどと呼んでいます)で同じものなのです。

実際には、こんなパーツがレールに付いています。



上の写真は、停止位置のチャージポイントです。

パーキングポイントにあるものと同じです。白い樹脂パーツの方には上下に金属板の様なものが見えますが、本体がこの位置にある時、本体側の2本の針金状の接点が接触することで充電が始まるという仕組みです。

プレート側はレールにしっかり溶接されて出荷されて来ますので、差し当たりパーキングポイントが必要でなくても将来的に必要と思われる位置にはパーキングポイントを付けておくことをお薦めしております。

必要と思われるというのは、弊社が約10年間のビジネスで得た経験則なのですが、後付け(レトロフィットと言います)は可能なのですが、後付けの場合には取付工事が伴うこと(レールを外す場合もあり、作業コストがかかります)、後付けの位置によってはケーブルが外にでてしまうこともあるからです。

折角きれいな1本レールなので、ケーブル類はレールの中を通しておくのが基本です。

さて、他のチャージポイントも見てみましょう。

矢印の先端(レールと壁の間)に先程と同じものがありますね。

これがチャージポイントで、左は階段の途中にあるのでパーキングポイント、右は、下側(2階)の乗降り位置にあるので、停止位置と区別しています。

4階停止位置にもチャージポイントがありますが、レールと壁の間にあるので少し見えにくいかも知れません。



レールは直径8cmのスチールパイプを曲げ加工しているものでいわば素材に近い物質で、電気的な信号や目印はありません。

本体側で停止位置、パーキングポイント位置、スピード、座面の旋回角度などなど各種プログラムを設定しているので、所定の位置に来ると停止することができるのです。

【上階側パーキングポイント】

4階にもパーキングポイントがありました。

下側と区別する為にパーキングポイント②としておきます。

4階停止位置は乗降りするポイントなので、下の図面の様に座面を開いた状態で上方向に旋回させます。

扉の開閉も見えますが、乗降りには干渉していないですね。

ただ、この位置に置いておくと、通路の邪魔になってしまうことが予想されます。

そこで、3段下がった位置にパーキングポイントを設置し、少しでも4階の扉周りを広くしようという設計を提案しました。

この2者間の距離はわずか1m、移動時間約10秒の微妙な位置ではあるのですが、ちょっと下に下げるだけで有効なスペースが生まれるのです。


図面2

【パーキングポイントと停止位置間の呼び送り操作】

これは私の経験の中でも最も伝わりづらい内容の一つでした。

設置前にお客様には写真や動画などで説明させて頂くのですが、リモコンの設定や座面の向きなど設置してから初めてご理解頂けたということも少なくありません。

頑張ってできるだけ分かり易い説明をしてみたいと思いますので、もう少しお付き合いください。

4階停止位置とパーキングポイント②を例にとって説明します。

① 階段上を移動する時の座面の向き

先ずは180度カーブでの座面の向きです。

HESの階段リフトは、レール上を移動しながら座面の向きを自由に旋回させることができます(世界特許のASL技術)が、座面を下側に旋回させて、フットレストが壁にぶつからないように向きを調整しています。



次に4階の停止位置付近です。

4階停止位置では座面を上方向に90度旋回させて乗降りしますが、下降する時は停止位置で下側に旋回してから下降していきます。

レール上を走行させるには、ひじ掛けのジョイステックか、介助用リモコンで操作する必要がありますが、パーキングポイントは通過します。

通過時の座面の向きも下向きです。



ということで、M様邸含めほとんどの場合、階段上では座面を下向きに設定することが多く、パ ーキングポイントを通過する時も座面は下向きで通過するということになります。

パーキングポイントでレールと平行にして駐機させるには、パーキングポイント用リモコンを使う必要があります。

レール上を走行させるには、通常、ひじ掛けのジョイスティック、又は介助用リモコンで操作します。 

② パーキングポイントに移動する時の座面の向き

では、4階停止位置で下りた後、パーキングポイント②に本体を送ってみましょう。




パーキングポイント②で本体はスッキリ収まりました。

次に4階で乗る時は、Pと反対側のボタンを押し続けて4階まで呼んで下さい。

90度上を向いて停まってくれます。パーキング用リモコンは、パーキングポイントと指定した停止位置間だけで使用するリモコンになります。

③ パーキング用リモコンと介助用リモコンの違い

用途に違いはありますが、設定を変えているだけでモノは同じものなんです。


パーキング用介助用リモコン図面


2つのリモコンを並べてみましたが、設定によって矢印部分に貼るシールを変えます。

左がパーキング用、右が介助用のリモコンです。

ボタンは何となくシール部分を押したくなりますが、上の-1-の左右矢印の部分です。

①又は②を押すと、リモコンが押す場所に関係なく、本体は上か下に動き出します。

これはフリーのリモコンと呼んだりしますが、ご利用者の方が手に麻痺があったり、お子さんが乘る時に、ご自身で操作が難しい場合に、介助の方がリモコンで一緒に上り下りする為のものです。

ですから、介助用リモコンと呼んでいて、我々はアテンダントリモコンと呼んでいます。

操作はひじ掛けのジョイステックと同じです。

一方で、③はパーキングに送る、④は停止位置まで呼んでくる為のもので、停止位置とパーキングポイント間の移動にしか使いません。

言い換えますと、パーキングポイントで本体をレールと平行にして停止されるには、このパーキング用リモコンでないとできません。

停止位置の設定は、1階か、2階か、3階か、はたまた4階か、レール設計によって異なりますがいずれか一カ所の停止位置のみが設定可能です。

今回の設定では、一つ目のリモコンが2階停止位置とパーキング①、二つ目が4階停止位置とパーキング②、それぞれの間を移動させる設定となりました。

一つ目のリモコンで4階停止位置に呼ぶことはできません。

【追加リモコン】

上の方で説明しましたが、今回のM様邸では、リモコンは全部でいくつあったか覚えていますか? 答えは全部で3つです。

標準装備としては、停止位置が下か上かの2箇所(レールエンド部分)が停止位置となるので、リモコンは2つ装備されます。

今回は、2階、4階のレールエンドが標準の停止位置となり、更に将来的なことも考慮し3階にも停止位置を設けましたが、これを追加中間停止と言います。

あのパーツですね。追加停止位置にはリモコンが付いてくるので、全部で3個になります。

しかし、現在は3階で乗り降りすることはなく、本体はここを通過する設定になっていますので、残ったもう一つのリモコンは介助用リモコンとして設定し、フリーで使える状態にしています。

設定は後からでも変更ができますので、将来もし3階でも乗降りされたいということであれば、リモコンを部品としてご購入頂き、3階停止位置とパーキング①間の呼び送りリモコンに設定されるか、介助用リモコンをパーキング用に設定されてもてもいいと思います。

因みに、リモコンの設定はHESにて行いますので、ご安心下さい。

 

 

【さいごに】

またまた長くなってしまいましたが、基本的なことを忘れていましたので最後に説明させて下さい。

停止位置やパーキングポイントに充電用のパーツが設置されているのは、乗らない時は本体を充電できる位置に停めておく必要がある為です。

本体はバッテリーでレール上を走行しますのが、使った分の電気を充電位置で補充する必要があるのです。

ジョイステックやリモコンのスティックを離すと本体は停止しますので、物理的にはレールのどの位置でも“停止”させることはできますが、充電できない位置にあるとバッテリーは静かに放電を始め、次に使用する時に電圧低下により動かない、最悪のケースはバッテリーが上がってしまい、使えなくなってご購入頂かなければならないということになってしまいますので、簡単なことですが『充電ポイントで停止・駐機させておいてください』というのが、基本的なご注意点になります。

充電していない状態では、アラーム音が鳴ってお知らせしてくれますので、充電ポイントまで移動させて下さい。

音が鳴っていなければ充電していますということになります。

 

 

シートはこだわりの“エレガントダークブラウン・チャコールグレイ”です。優雅ですね。

 

以上、HESが提供するドイツ技術の階段リフトは、色々な設定方法があって最初は分かりにくいこともありますが、世界最高水準の技術を持ち、様々なご提案ができる柔軟な機械なのです。